【rkrn】町の団子屋さん【日替わり】

5種類の結果パターン

いらっしゃい、お客さん - 2024年4月26日

○綾部喜八郎○





「どうも〜〜、お団子食べに来ました〜」




「あ"っ………また！」






暖簾の向こうから手を振る彼を見た途端、わたしは毎度の如く水の張ったタライを持って駆け出した。






「もう、またこんなに泥だらけで………きちんと手を洗わないと、そんな手でお団子なんて食べたらお腹を壊しますよ？」



「いやぁ、たぁくん53号の政策が思ったより捗りまして」



「た、たぁくん？いやそんなことはどうでもいいんです！」







相変わらずわたしの話を聞いてくれない。半ば諦めつつも、無理やり彼の手を掴んでタライに突っ込んだ。パシャパシャと水で濯いでいくうちに、綾部くんの手から泥がだんだん落ちていく。






「冷たいですね」



「水ですからね」



「いや、貴方の接し方」



「わたしですか？」






びっくりして彼の顔を見るも、いつもながら飄々とした様子で、何を考えているのかわからない。
ぐ、ぱ、と手を広げたり閉じたりしながら、「前はもう少し優しかったんですけどね」と呟いた。





「…そう、でしたっけ」



「洗い方も優しかったです」



「それは…いい加減1人で洗ってもらいたいんですけどね」






呆れてわたしがそう言うと、「そう言いつつもいつも洗ってくれるじゃないですか」と返される。
…まあ、そうしなきゃ洗ってくれませんからね。






「わたしは心配してるんですよ。綾部くんはいつも穴を掘って泥だらけでしょう、そのまま食事なんかしたらばい菌が体に入っちゃいますよ」




「心配…？」





キョトンとして、綾部くんが呟いた。「僕のこと、怒ってたんじゃないんですか？」




「怒るって言うより……う〜ん、そう言うのとは違くて」



「じゃあ、これを言ったら本当に怒られちゃうかもしれないですね」



「え？」







ぽそりと呟かれた言葉を、わたしは思わず聞き返した。






「僕がいっつも泥だらけでこのお店に来るの、」







水で冷えた綾部くんの手が、わたしの両手を覆い包む









「わざとだって言ったら………怒りますか？」

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