【ＲＫＲＮ】隣にいて【日替わり】

19種類の結果パターン

ちゃんと傍にいてよ - 2024年4月18日

【綾部喜八郎】


勢い良く自分の長屋に飛び込み、障子を閉めた。


「うっ…ぁ、」


ーーーーー刹那、涙が溢れ出す。


私は世にいう"強がり"というらしく、今まで誰にも、親にさえ涙を見せたことがない。


けれど、見せないだけだ。

見せないだけで、"泣かない"わけでは、ない。


だからといって今までこうしていたことをいきなり変えることなど不可能に近い。


だからこうして、ひとりで泣く。


「ねえ、YOU。…いるんでしょ？」


不意に聞こえた、障子越しの声。

それはいつもの能天気なそれではなく、…ずっと、ずっと優しい。

何故か激しさを増す嗚咽を押し殺しながらも刺々しく返事を返す。

「…何、」

少しの間、辺りを静寂が支配する。

暫くして息を吸い込む音と、…障子に近付いた証、うつる影が濃くなる。


「…見えた。泣いてるんでしょ？」


核心を突く言葉に、何が切れる音がした。
それが堪忍袋の尾だと気付けないまま。

喜八郎は何も悪くないと、思い直せないまま。


「分かってるんだったら早くそこから消えてよ！
今、誰にも、あんたにだって会いたくないの！
気休めの慰めならいらないから、安い優しさなんか…いらないから…っ」


息を吐く様に嘘を吐く。


気休めの慰めでも安い優しさでも、欲しくて欲しくて仕方ないのに。


ーーーーーどうして、私は、



「YOU」



後ろから感じる、柔らかい体温。
すぐ傍には障子が荒々しく開けられた跡。


壊れた空間で、喜八郎は私を強く抱き締める。



「ひとりで、泣かないで」



単純、かつ短い言葉。


それは、私がこれでもかと積み上げた嘘に突き刺さり、傷口から本心が零れ落ちる。


まわされた手を、強く握った。


「ーーーーーーーーーーっ、」




私が初めて人の前で泣いた日。
それは、私が初めて人に恋した日だった。



(綾部喜八郎×涙)
(どうせ泣くのなら、二人で)

ちゃびえもん様！リクエストありがとうございました！

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