【オリヘタ】彼等、彼女等の日常【日替わり】

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見てくれてありがとうございます - 2024年4月26日

ある日、ヴァレーリヤが見慣れないペンダントをしていた。元々アクセサリーをほとんどつけないヴァレーリヤがペンダントをしているから、私はひどく驚いた。
そう、さらに言うと、つけているのはよりによってペンダントなのだ。首に残る傷を隠すために包帯を巻いている彼女は、今まで首筋に人の目ができるだけ行かないように注意を払っていたのに。

「ヴァレーリヤさん、それ……」
「ん？ ああ、ヴィチューシカが作ってくれたんだ。可愛いだろう？」

日頃の仏頂面からは予想もつかない、穏やかで、多分に誇らしげな笑顔で返事が返ってきた。ちくしょう、のろけてやがる。

「見ろ、亜麻の花だ。私の国花だ。……わざわざ自分で図案から描いて作ったらしい。本人は一言も言わなかったが私は知っている」

つまりは、ヴァレーリヤはヴィクトルさんの机を漁っているのである。勘弁してあげてよ。
そこに、タイミングがいいのか悪いのか、紅茶とヴァレニエとプリャーニクを持ってヴィクトルさんが入ってきた。そして私のとヴァレーリヤのと自分の分をテーブルに置いて、自分も座った。私が何回もヴァレーリヤとお茶をするものだから、ヴィクトルさんは私の好みの紅茶の濃さを覚えたらしい。
ヴィクトルさんのところ、トゥーラはプリャーニクで有名だと聞いた。確かに焼いてくれるプリャーニクはとても美味しい。さすが本場の味だ。そう言ったら、例え素材が同じでも、どこで焼いたかで味が変わってしまうと言われた。そんなことがあるらしい。彼は、自分の地元の味を自分で再現できないのがとても悔しいのだろう。ヴァレーリヤが前に言ってたように、そういうところは本当に職人気質だから。

「ところでヴィクトルさん」
「何だ？」

私は今日ヴァレーリヤを見てからずっと疑問に思っていることを聞くことにした。

「ヴァレーリヤにペンダントをプレゼントしたでしょ？ しかも手作りで」
「ああ、したが？」

ヴィクトルさんは首をかしげた。

「ペンダントを贈る心理、知ってます？」
「……え？」

ヴィクトルさんのみならず、ヴァレーリヤも私の言うことに興味を持ったらしい。

「『相手を縛っておきたい、独占したい』という深層心理の現れ、ですってよ」
「…………！」

ヴィクトルさんの動きが固まって、ついで頬が赤くなった。お前は女子か。

「しかも手作り。……もう、明らかですよね？」

さあ、恋心を認めるがいい、ヴィクトル・セリョーギン。私は二人の愛を応援してるよ。

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